今日はマウントハーゲンを出て、クンディアワへ向かうことにする。宿に「今日ここを出ることにする」と告げ、カウンターで清算をしていると、アンナがニヤニヤしているのに気がついた。


「アンタ、なんか大事なもんわすれてるでしょう」


僕が何のことだかわからずポカン、としていると、アンナが奥から僕のパスポートを持ってやってきた。タリへ向かう前にここの宿に預けておいたのを、まるっきり忘れてたのだ。笑ってアンナに礼を言い、ハウスポロマンを後にした。


宿の車でミシガンの老夫婦たちと供に街まで下り、いっしょにPMVへ乗った。PMVの座席がうまるまで、しばらく時間がかかった。マウントハーゲンからハイランドハイウェイを下るその道は舗装がきちんとしてあり、PMVはスピードを出して、その道を走り抜けていた。僕はひとりクンディアワで降り、老夫婦達とは別れた。


タリで出合った警察官のトニーに会いに、警察へ行ってみる。しばらくすると、トニーがやってきた。彼は今日は非番なのか、私服だった。今日は彼の家に泊めてもらえることになった。街で買い物をしてから、警察の車でトニーの家まで行く。近くの雑貨屋で働いている奥さんところへ挨拶へ行き、その後マーケットの近くの広場で少年達と話しをして、時間を過ごした。少年達はみな、日本の事を聞きたがっていたようだけれども、僕は何を話したらいいのか思い浮かばなかった。


PMVで街まで出て、トニーの奥さん達といっしょに買い物をした。ストアのオーナーは韓国人らしく、韓国人の女の子が店番をしていた。街の不良少年達が、お札をピラピラさせながら、「やらせてくれよ」と女の子をちゃかしていていたが、女の子は「うっさいわね」という表情で無視していた。彼女の黒い髪がなんだか印象に残った。


夜、トニーの家で食事を食べさせてもらう。トニーの小さな家の壁という壁はキリスト教のポスターで埋め尽くされている。トニーが家に来ていた電気屋を街まで送りに行っている間、お隣から借りてきたP・N・Gスーパーサウンドというミュージックビデオを家族のみんなで見た。地元の人気ミュージシャンを集めたビデオなのだろう。映像はちゃちかったけれども、音はよかった。


トニーに聞くところによると、ラバウルへ向かう船は金曜の夕方6時にレイの港を出るらしい。木曜にはレイについていないといけない。会う人はみな「マダンへ行きなよ。ほんとうに静かでいい街なんだ」と言ってくれるのだけれども、僕は多分行かないだろう。