飛行機の中で夜明けを迎えた。
ポートモレスビーのジャクソン空港には、さっきまで雨が降っていたのか、ちょうど虹がかかっていた。


入国審査では、僕が宿泊先をまだ決めていなかったので、なかなか先に通してくれなかったが、昨日、空港で知り合ったマイケルが職員に適当にやりあってくれたお陰で、無事通ることができた。


宿泊先は、とりあえずサルベーションアーミーホステルに決めたので、マイケルがつれていってくれることになった。
この国には、普通のバスやタクシーというものが無く、その代わりにPMV(Public Motor Vehicle)と呼ばれる型落ちのマイクロバスが街じゅうを走っているので、これに乗ってホステルに向かうことにする。PMVの中は土埃っぽくて、シートはところどころ穴が空いていてスプリングが飛び出していたりする。2,30分ほど乗ると、海岸の近くの小さなホステルについた。
マイケルが「明日と明後日は、仕事が無いから街を案内してあげるよ」といってくれたので、礼をいって彼と別れた。彼には本当にお世話になったので、心から感謝の意を表したかったのだけど、どう言ったらいいのかわからなかったので、何度も「ありがとう」と言うことくらいしかできなかった。


このホステルは、サルベーションアーミーというキリスト教団体が運営していて、日本でいうところの救世軍だ。救世軍というと、年末あたりにラッパを吹きながら募金を集めている軍服のおじさんくらいしか思い浮かばないけど、こっちでは単なる教会会派の一派といった感じであまり特殊な印象は受けなかった。


部屋でひと休みしてから、近くにあるマーケットまで行って名前の知らない不思議な果物を買い、帰りに食料雑貨屋でスパゲティの缶詰を買ってきた。


夜、部屋でくつ下の洗濯をした後、庭に出てみると、パプア人の女の子がいたので、少ししゃべった。しばらくしたらコンピュータースクールに通うといっていた。彼女は「夜、出歩く時はラスカルに気をつけてね。先週は男の子が殺されてたわ。」と教えてくれた。


ラスカルというのは、こちらでは悪人集団全般のことをさすらしく、会う人会う人みなラスカルに気をつけろという。


共用のキッチンで、昼に買った缶詰を温めて食べていたら、傍にビジターズブックがあるのを見つけた。日本人のメッセージもいくつかあって、いろいろと為になる情報が書いてあった。


「ココダトレイルにガイド無しで行くと死ぬよ」


と書いてあった。